透明トレー回収スーパーに対応する仕様設計ガイド

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透明トレー回収スーパーに対応する仕様設計ガイド

スーパーの店頭で進む食品トレーの回収。制度が整備される一方で、回収非対応の設計では返品やクレーム、納品遅延のリスクが高まっています。

本ガイドでは、「回収されるトレー」の設計条件を明確にし、図面で即活用できる仕様選定のポイントを解説します。再設計や商談やり直しを防ぎ、複数チェーンへの安定展開を支援します。


なぜ店頭回収を前提に設計するのか

店頭回収は制度化と拡大が進んでいる

食品トレーの店頭回収は、制度面・実施面の両方で加速度的に整備が進んでいます。

  • FPCOは全国に約5,800カ所の回収拠点を展開し、NIR(近赤外線)判別装置を使って透明トレーの自動選別を実施。
  • 主要チェーンでも独自の運用ガイドライン整備が始まっており、たとえばセブン&アイの実証実験専用ページには、受入条件まで明示されています。
  • また、スーパーや生協では、洗浄・乾燥・ラベル剥離を求める告知も一般的です(例:関西スーパーコープデリ)。
  • 行政も、江東区のように回収対応店舗をリスト化して住民に周知するなど、回収の社会基盤が着実に構築されつつあります。

回収対応設計でバイヤーの信頼と将来性を確保する

スーパー回収に対応したパッケージ設計は、トラブルとコストの両方を抑える効果があります。店頭の回収方法やリサイクラーの選別基準に合致する設計であれば、受入率が高まり、返品やクレームのリスクも大幅に低減されます。

その結果、テスト導入から本格展開への移行がスムーズになり、包装の再設計なしで全国展開が可能になります。


想定事例:透明トレーの「細部未対応」が全国展開を妨げたケース

ある惣菜メーカーは、7月中旬に向けた季節限定のチルドデリ商品を半年かけて企画しました。試作ではレシピ評価も高く、容器は高透明、フチにブランド印刷を施し、キャンペーンコピーを全面に載せたスリーブ付きという、売場映えを重視した設計でした。

しかし発売初週から、複数の店舗で不具合が報告されました。スリーブがきれいに剥がれず、糊が側面に残る問題や、微細な着色により蓋が店頭照明で白く濁って見える現象が発生したからです。また、回収業者からは「印刷された透明トレー」や「ラベル残り」が懸念点として挙げられ、いくつかの地域では圧縮済みベールの受け入れ自体が拒否されました。

結果として、商品は一時出荷停止となり、ラベル仕様や金型の微調整が必要となりました。修正対応に追われる中で、商品は計画していた販売ピークを逃してしまい、プロモーション全体の再構築が必要となる事態に陥ってしまいました。


スーパーでの透明トレーの店頭回収。回収を前提とした設計がもたらすビジネス上のメリットを象徴する画像。

店頭回収を前提に設計で得られるメリット

  • 取引継続が安定:クレームや返品報告が減り、SKUの取り下げや発注停止のリスクが下がります。
  • 発売日を守れる:最終段階での包装手直しを避けることができ、季節商品でもスケジュール通りに展開可能です。
  • 店舗からの問い合わせが減少:ラベル剥がれや誤解を防ぎ、現場負担や対応コストを削減できます。
  • 全国展開がしやすい:一店舗で回収合格の仕様があれ、他店舗への展開もスムーズです。
  • 現場コストを抑制:回収しやすいトレーはベール品質を高め、バックヤードの仕分け負担も軽減します。
  • ESG対応と信頼感:消費者・小売側どちらにも「回収に適した設計」であることを示せます。
  • 陳列映えと透明性を両立:高透明PPやPETなら、商品が美しく見えつつリサイクルにも対応可能です。

避けられるリスク

  • 突発的な修正対応:発売後の急なラベル変更や金型改修が不要になります。
  • 供給停止の回避:包装不備による納品ストップや差し戻しのリスクを最小限に抑えられます。

スーパーでの回収に向け、受入基準のチェックポイントとなる透明トレーの材質とリサイクルマーク。

透明トレー:スーパー受入基準のチェックポイント

以下は、スーパーでの透明トレー回収における代表的な受入基準を整理したものです。実際の基準はチェーンや地域によって異なるため、事前にバイヤーの受入条件および回収委託先と確認することが重要です。


1. 材質・色調:PPまたはPETの無着色・高透明グレード

  • NIR(近赤外線)識別対応のため、PPまたはPETの「無着色・高透明」素材を使用してください。
  • 黒・乳白色・着色トレーは誤識別や排除の対象となります。
  • ヘイズ値のある高透明グレードを選定し、黄ばみや曇りの出やすい低品質材や再生材の多用品は避けましょう。

2. 構造:モノマテリアル設計/同一樹脂構成

  • 全パーツを単一素材(モノマテリアル)で構成してください。
  • 蓋と本体は同一樹脂(PP/PP、PET/PET)で統一し、はがせない多層構造(ラミネート等)は回収対象外となる可能性があります。
  • バリア性や意匠が必要な場合は、完全に剥離可能なスリーブ等で対応してください。

3. 装飾・ラベル:本体印刷NG/ラベルは剥離式+低残留糊

  • 本体には印刷を行わず、識別・選別しやすい状態を保ちます。
  • ブランディングは剥離式ラベルまたはスリーブにて行い、低残留・イージーピール糊を使用。
  • また、平坦なラベル貼付面(ラベルパネル)を設計することで、店舗側での剥離作業が簡便になります。

4. 表示:樹脂コード+プラ識別マークを刻印

  • 底面またはフチに「PP」「PET」などの樹脂コードと「プラ」識別マークを刻印してください。
  • 印字は読みやすさを確保するため、最低文字高を指定し、周囲にクリアスペースを設けることが推奨されます。
  • 使用後でも読み取り可能な表示は、現場での仕分け精度を高めます。

5. 回収状態:洗浄・乾燥済み/ラベルなし

  • 濡れたまま・汚れ付き・ラベル未剥離のトレーは、回収拒否となることが多くあります。
  • 商品パッケージ上に、以下のような案内を明記しましょう:「ラベルやシールは剥がし、水洗いして乾かしてから回収してください。」

SPIが「図面レベルで具体化」する、スーパーでの透明トレー回収に対応した容器の技術図面。

SPIは、回収対応設計を「図面レベルで具体化」できるパートナーです。当社では、ラベル貼付面・刻印位置を明確に定義した設計図を共同開発し、現場で使える形でご提供します。

ご要望に応じて、適合宣言書・ポジティブリスト整合性・移行試験要約・トレーサビリティ・変更管理書類を一式まとめてご提出可能です。試作金型や初品レポートの対応も行っており、量産前のバリデーション支援にも対応しています。


まず「回収設計ありき」で考える

高透明のPPまたはPET、本体印刷なし、剥がせるラベル、読みやすいエンボス、そして量産前の簡易チェック。この基本を押さえることで、スムーズに回収対応しやすい設計となります。

加えて、バイヤーの店頭回収プログラムに合わせた追加条件の確認と、少数店舗でのテスト販売も有効です。一度しっかり設計すれば、再設計や遅延リスクを減らし、コストも抑制できます。さらに、他チェーンへの横展開も格段に進めやすくなります。


FAQ

NIRとは何ですか?

NIR(近赤外線識別)とは、各プラスチック樹脂が持つ固有の「分光特性」をスキャナーで読み取り、PPとPETを自動で選別する技術です。
FPCOなどの大規模な回収ルートで実用化されており、店頭回収対応トレーの設計には重要な要素です。詳しくはFPCOの回収ページをご覧ください。

SPIは店頭回収対応の透明トレーを提供していますか?

はい、提供しています。
当社の透明PPトレー製品一覧はこちらになります。回収対応設計にも対応可能で、必要に応じて仕様書・設計図・承認用ドキュメント一式もご用意いたします。

SPIには店頭回収対応の透明トレー供給実績がありますか?

はい、実績があります。SPIでは、透明PP・PET製のトレーおよび蓋を製造しており、ご要望に応じて店頭回収対応設計にも対応しています。ラベル貼付面や刻印位置を明示した図面、試作サンプル、適合書類一式(ポジリスト・適合宣言・トレーサビリティ等)をご提供可能です。
なお、小売側の承認を保証するものではなく、最終的な受入可否は各バイヤーおよび回収業者の判断となります。

黒い本体に透明な蓋を組み合わせても問題ありませんか?

通常はおすすめできません。
黒いトレー本体はNIR識別が困難なため、多くの回収ルートで受入対象外となる傾向があります。どうしても黒を使用する場合は、NIR対応ブラック樹脂を使い、バイヤーの回収業者から書面で承認を得ることが必要です。
確実な選択肢は、透明な本体+透明な蓋の組み合わせです。

リサイクル対応を保ったまま、高透明PPや防曇仕様の製品はありますか?

A:はい、対応製品があります。
当社のウルトラクリアPPパッケージは、PETに近い高透明性を実現し、防曇仕様も選択可能です。
いずれも単一素材(モノマテリアル)構造を維持しており、リサイクル適合性を損なうことなく使用いただけます。

店頭回収対応のため、ラベルはどう処理すべきですか?

スリーブやラベルは、きれいに剥がせる設計が必要です。低残留性の糊と、平坦なラベル貼付面(ラベルパネル)を設けることで、現場での剥離作業が容易になります。
はがせないラベルや印刷面積の多い製品は、回収拒否されるリスクが高まります。

回収・食品接触に関する適合書類は必要ですか?

はい、必要とされるケースが多いです。バイヤーからは、食品衛生法に基づく適合宣言書、ポジティブリスト適合性、移行試験結果などを含む適合書類一式の提出を求められることがあります。
SPIでは、必要に応じてこれらのドキュメントを作成・提供いたします。

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